検定が出来るまでの30年Vol.9 特殊な掃除で洗礼

検定が出来るまでの30Vol.9 特殊な掃除で洗礼

内閣府認可財団法人認定 ウエディングプランナー資格

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世の中を渡るのは難しい、必ずしも順風満帆というわけにはいかない。新入社員で就職して約6か月、地獄のような日々から解放され、やっと一人前と認められたのだが、またいじめのような仕打ちとも取れる第二の試練がスタートした。

配属された初日に、いきなり「辞めろ」と言った料理長が、この時の総支配人兼料理長である。この総支配人兼料理長が自分の前に大きくはだかった。総支配人を兼務したとたんに、態度がガラッとよくなったのだが、それでもなかなか厳しかった。

ある土曜日の午後、私が宴会場のパントリーでシルバー磨きをしているところに、総支配人兼料理長が突然やってきて、「谷藤は、土曜日が暇そうだから、俺がお前にプレゼントを買ってやったよ」と言われた。ものすごく悪い予感がしたが、「来週の木曜日には届くので、届いたらもってきてやるよ」と言って去って行った。いきなり憂鬱になり戦意喪失してしまった。そのことが気になって、金曜日を迎えたが、来なかったので、脅しかと思っていた。次の日は、土曜日で予約も入っていなかったので、宴会場の清掃の計画をたてて、翌日出勤と同時に、ジャニターに着替えてて掃除を始めようと思ったら、いきなり総支配人兼料理長が宴会場に入ってきて、「おお、今日も一生懸命やってるか。」と言ったかと思うと、「谷藤、この前約束した、お前へのプレゼントが届いているから一緒に来てくれ」というので、倉庫までついていくと、「これだよ」と見せられたのは、大人が3人くらい入るとてつもない大きな厚手の透明なビニール袋に入った木くずとそのそばには140㍑は入ろうポリバケツが用意されていた。

私は、何のことかよくわからなかったが、総支配人兼料理長が、「ポリバケツに、10㎝ほど水を張って、この木くずと一緒に宴会場に運んでくれ」というので、運んだら、「どうだ、嬉しいだろう」と言われて、「ハイ」と答えるしかなかったが、これから私がやらなければならないことを、満面の笑顔で説明し始めた。ようは、木くずを水につけて、固く絞って、それを宴会場のクロスや壁にこすりつけて、クロスをきれいにしろということだった。実際にやってみると、驚くほど壁がきれいになった。結構衝撃的にきれいになった。最初は楽しくできたが、小さいといっても宴会場だ。とてつもなく広く感じた。当然1日では難しいので、土曜日だけしかできない仕事なので、何週間もかかった。やる前には当然、床の養生をしなくてはならないし、壁に残った木くずを取り除くのも実は結構大変な作業だった。このような作業がしばらく続いたが、おおまか終わると、またプレゼントをもらった。それはなんと消しゴム1ケースだった。今度は何かと思ったら、宴会場のすべての壁の下についている帯状の木。つまり巾木についた靴墨や汚れを消しゴムで消して回れというのだ。これも、1日では少し難しいので、2日くらいかかったが、終わったら点検するというので呼んでくれとのことだった。少しでも汚れが残っていたら大変なことになりそうなので、入念にチェックして、終了した報告をした。すると、「お前、随分早く終わったけど、本当に完璧にできてんだろうな?」と脅しともとれる高圧的な言い方をしたので、私もためらうことなく、「勿論、完璧です」と答えた。「よ~し、それじゃこれからチェックするからちょっと待ってろ」と言われたので、宴会場のパントリーで待っていると、半ば楽しそうに、総支配人兼料理長が来て、点検し始めた。じっくり顔を壁に寄せて、巾木を集中的に見ながら、宴会場の奥に進んでいく。私は、ドキドキしながらも、エリアを間違えトイレを探すお客様をご案内し終わったところで、宴会場の奥のほうから、張り裂けそうな大声で「タニフジーッ、ちょっとこーい」と呼ばれたので、私は心臓をバクバクさせながら「ハイ」と総支配人兼料理長のところへ行くと、「おまえよぉ、完璧にやったって言ったよな、なんだこれは」と汚れている部分を指さした。私は、どこのことを言われているのかわからなかったが、よくよく見ると長さ1㎝、幅0.05㎜くらいの線とも言えないものが、確かについていた。私は、言いがかりとしか思えなかった。しかし、総支配人兼料理長がそういうので、とりあえず「申し訳ございません」と深々と頭を下げて謝った。なんてことだろう。せっかく仕事にモチベーションが上がりかけたのに、また下がってしまった。

意気消沈しながら帰り支度をしてロッカールームをでると、待っていたかのように総支配人兼料理長が立っていた。「谷藤は、今日はなんか予定あるのか?」と尋ねられたので、「特にありません」と答えると、「そうかっ、じゃ寿司でも食いに行くか?」と予想もしない誘いを受けたので、半信半疑で「はい」と答えて寿司をごちそうになり、色々なお話を聞かせていただいた。ちなみに、ごちそうになった寿司は、銀座九兵衛とはいかなかったが、かなり高級で、今まで口にしたことがない高級な寿司であることは理解できた。私は、反骨精神で自分のモチベーション上げるタイプなので、「この野郎」と思った上司に高級な寿司などごちそうになったのは、とんだ肩透かしだった。しかし、実際には、本当にありがたいことで、感謝すると同時に、こころから嬉しく思った。

このあと私は、およそ3か月周期で、人事総務を除く全セクションを回ることになる。このホテルは、東京駅の前にある老舗ホテルだが、このホテルの専務が、私に目を掛けてくれて、私の人事だけは、専務が絡んだものであった。ある日、専務に呼び出され、専務室で小一時間自分の今後についての話をされた。とにかく、3年間で全セクションを回すので、1セクション3か月とし、その期間でプロの仕事ができるようになれというお話であった。私は、マネジメントに興味がなく、ただただ日本一のウエイターになることしか興味がなかったので、FB以外のセクションには全く興味がなかったので、一般的には良い話だと思うが、私にとっては何の魅力もない話であった。

 

 

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