連載記事2016年10-2 サービス業(接客業)のプロ意識と接客技術

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連載記事2016年10-2
サービス業(接客業)のプロ意識と接客技術
(ヒューマンスキルの重要性)

プロの技、本物とは
日本の技術は世界的にも定評があるが、その基礎を担っているのはまさに職人の技である。東京中央区にある下町の月島の町工場(まちこうば)で作られている部品がなければロケットが飛ばない。そんな重要な部品の製作を担っているのが職人の旋盤(せんばん)技術だったりするのである。このような技術はまさにプロフェッショナルの技術であり、長い時間の末に確立された技術である。プロの技術は本来素人がまねできない領域に存在する。
こうしたプロフェッショナルの技術は、一言で言うと「妥協が許されない技術」である。だからこそ崇高で人に感動を与えることが出来るのだ。どんな仕事においてもお客様からお金を貰うということは、プロの領域の仕事を提供しなければいけないはずだ。ところが、webの影響だろうか、世の中は言った者勝ち的なところがあって、web上で「私はプロです」と言えば、その日からプロになった気になる。特にweb上の情報ではプロと素人の線引きが出来ないのである。最近はD.I.Yなるものも注目され、まさに素人の作品に価値を見出す環境もある。
しかし、D.I.Yも一過性のブームと考えられる。なぜなら、自己満足度は高いが、決して人を感動させる領域のものではないからだ。披露宴は歴史的にみるとまだまだ浅いが、その中で、どんな時代にあっても、新婦の両親に対する手紙の朗読だけは進行から外されることは皆無だった。それは、披露宴の中で唯一演出ではなく本物ゆえの感動場面だからである。
本物は人の感動を呼ぶが、本物ではなくても高い技術をもった真のプロフェショナルと呼ばれる人が作ったものは例え作り物であったとしても、限りなく本物に近く人を感動という領域に誘うことが出来るのである。だから、フィクションだと分かっていても本を読んでは感動し、映画を見ては涙するのである。

プロとしてのヒューマンスキルの重要性
婚礼のような高額商品に携わるプランナーやヘアーメイク、着付け、写真、花など全ての人は、新郎新婦にとってはプロである必要がある。また、大勢の人が集まり、その英知を結集し一つの結婚式を作り上げていくのである。「一丸となって」という言葉があるが、大勢の人が真剣に一丸となれば、恐らく成就できないことはないはずだ。どんな企業であっても全ての人が、真に一つの同じベクトルを目指せば、どんなことでも実現できる。しかし、残念ながら、その陣頭指揮をとり導くことが出来る人材がそういない。全員が腹を割り、本当の気持ちを伝え合うことが出来れば一丸となれる状況を作り出すことが出来るかも知れない。
そのためには、お互い理解し合うことが大切であり、その理解しあうツールがヒューマンスキル、すなわちコミュニケーションスキルである。

コミュニケーションは、日本語にすると情報交換であるが、相手に言葉で自分の意志を伝えるのは意外と難しい。普段、友人や知人と話している時も、話している人たち同士は、絶対に自分の言いたいことが100%相手に伝わっていると思ってコミュニケーションしていることが多い。しかし、意外とそうでないことが多いのだ。
相手に自分の意志を伝えるときには、論理的に物事を伝えないと伝わらないことが多いのだ。そこで、伝達方法として、トゥールミンモデルというロジカルな手法がある。
例えば、凄く走るのが速い友人A君がいて、そのことを相手に伝えるときにどのように伝えると効果的に伝えられるかということだ。
「A君は走るのが速いんだ」という「主張」は、この言葉だけ伝えても「それがどうしたの?」と言われるのが関の山だ。しかし「A君は、100mを10秒15で走るんだ」という「事実」を加えて説明すると、100mを走る時間がどれくらいなら速いかという知識のある人にとっては、A君は速いという認識を持てる。しかし、その知識がない人にとっては、正直どれくらい速いか分からない。そこで更に「100mの日本記録は、10秒00である」という「論拠」を加えることにより、相手は「A君って神的に走るのが速いよね」という感動に近い驚きをもってA君の速さを評価させることが出来る。こうした手法を学ぶことにより、より相手に自分の主張を明確に伝えることが出来るのである。普段のなにげない会話にも、ちょっとした知識を得ることで、非常に効果的に物事が進められるようになるのである。こうした知識の集積が、プロの領域であり、実践で効果的な結果を導くことが出来る。様々な学習と実践が伴って初めてその領域に達することが出来るのである。

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