連載記事55 「人としての喜び」を感じられる職場環境構築を

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私は、ホテル勤務時代、どうしたらホテルの給料が高くなるのか常に考えていたような気がする。

私自身が高い給料を欲しいわけではなかった、というと嘘になるが、それよりも、自分が働いているホテル業界というところを、高額な給与がもらえる職種として自慢したかったのだと思う。

 

振り返ると、昼夜を問わず働いていたような気がするが、人からは、サラリーマンなのに、なんでそんなに働くの、そんなに残業しても給料でないよ、なんて言われたこともあった。

 

私は、仕事が楽しかったから働いていた。辛いことは楽しいことの二倍はあったけれど、トータルで考えると楽しかった。

なぜ楽しかったか、そのときの状況を振り返ってみると、その要素はいくつかあった。

 

一つは、自分の給料が、自分が評価されていることを十分に認識できるものであったこと。二つ目は、自分の考える通りに仕事が進むことで、仕事に対する達成感や満足度が非常に高かったこと。三つ目は、自分が働いている業界の社会的地位を向上しようと真剣に戦っていたことだと思う。

 

このようなことが自分の仕事に対するモチベーションを高揚させ、何事にも前向きになれたし、仕事が楽しいから会社に行くことが楽しみで、通勤に毎日片道2時間以上かかっても平気だった。その結果として、会社の業績を上げることもでき、非常に良いスパイラルを生み出していたのである。このようにエンジョイ出来たのは、生意気で、使いづらい部下の私を寛容に見守ってくれた上司の方々の存在が重要で、その上司の方々には今でも心から感謝している。

 

また、もう一つの大きな要因として、社会や経済が現状と比べるとはるかに安定していたという時代背景があったことは、紛れもない事実であろう。時代の良し悪しは、人のモチベーションにも大きく影響する。

 

先日、ある統計結果を見ていたら、仕事に求める最大の目的は、低年収の人ほど「給料」、高年収の人ほど「社会や人々へ貢献」と答える割合が多かった。

 

低年収層は、「仕事=お金」と短絡してしまい、自分が会社に必要とされているというような幸福感を得られていないようだ。

 

本来人間はだれでも、モチベーションを有しているはずだが、それは決して報酬の多寡によるものではないと思う。

楽しいからやりたいとか、好きだからやりたいとか、社会に貢献できるからやりたいといった、人間の本質的な欲求をベースにしたものであるはずだ。

 

そう考えると、「仕事をして満足感を得たい」というのは、人間本来の欲求であるはずで、その欲求が、現状の職場では、様々な状況によって充たされないから、就職しても3年も続かないという状況になってしまっているのではないか。

 

会社において、勤続年数が長くなり経験が豊富になると、後輩にものを教えたいという欲求にかられるのが自然だと思うが、これは、人間が、子孫繁栄を何らかの形で認識しているのと同様、本能なのかも知れない。

 

もしそうなら、今の、人的新陳代謝の早い企業のやり方は、人の本質に逆らうことを従業員に強いているのではなかろうか。

少数の生き残った者だけが20代後半で小店舗でも店長という立場になり、更にそのほとんどが数年に以内に退職する、そんな状況では、「人としての喜び」を感じながら仕事に打ち込むなどできようはずがないし、仕事における知識や技術の伝承などあるわけがない。結果、会社やその社員はノウハウを持たない素人集団になってしまうのである。

この現状は、ウェディングビジネスでも同じである。人を感動させることが本来の目的である仕事が、今後も発展していくために、大切にしなければならない本質をもういちど再認識すべき時である。

 

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