連載記事10 適正価格の存在の有無

私が、駆け出しホテルマンの頃、上司に「このままだとジリ貧になるので、こんな新しいことをしたい」とお願いしたら、「御三家がやっているならいいよ」と言われた。なんという回答かと耳を疑った。

つまり、商品そのものが良いかどうかではなく、市場に実績があるかどうかが重要ということだが、それは、うまく行かなかったときの責任逃れに過ぎない。私は、これでは新しいことなど何一つ出来ないと思った。これが過去のホテル業界の体質であり、今もなおその風土は引き継がれている感がある。

現在、私が設計したクラウド形式の宴会・婚礼システムの販売を行っているが、機械で出来ることは機械にまかせるという考え方で、1婚礼につき最低でも5時間の時間削減が出来るため、人件費を有効に使うという趣旨をもって販売を行っている。しかし、システムの説明より前に、「導入実績は?」と言われることが多い。分からなくはないが、まず大切なのは「何ができるか」のはずだ。

戦後の日本は、職人が作ってきたと言っても過言ではない。日本の小さな町工場の技術が、世界の一流メーカーの先端技術として導入される例も少なくない。そこでは、導入実績などではなく、プロがプロの技術を見抜く目をもって決定されている。

サラリーマンの世界では、自分の考えは、良くも悪くも通らないことが多いが、信念をもって臨めば必ず実現できると信じることのみが、そのときの自分の生きていく支えだったような気がする。しかし、そんなストレスが、いつしか私を独立の道へといざなったのである。

さて、私は、ホテル現役時代から現在もなおコンプレインの話を聞く機会が多い。コンプレインの原因は、会場側の誠意の無さや確認ミス、見積金額の問題など様々だが、最近多いコンプレインから改めて疑問に思うのは、挙式披露宴の費用に適正価格というものはあるのだろうか?それとも、適正価格などという概念自体、必要がないのだろうか?ということである。

現状を見ると、勿論全ての会場ではないが、婚礼付帯商品に適正価格という概念はなく、価格に関しては無法地帯だと感じる。

ある新婦様から聞いた話では、初期見積にレンタルドレス1着20万円と印字されていたのが、実際に指定店へ行ってみると20万のドレスは無く、結局ドレス1着だけで小物を含め約60万円にもなったが、その会場は持ち込みが一切不可なので、利用せざるを得ないという。

また、総体的に、どの付帯商品を見ても価値が低い。5,000円の装花が1輪ざし程度だったとか、80,000円の装花なのに花弁が茶色く変色していた、といった話は枚挙に遑がない。

ではなぜこのようなことが起きるか。理由は、ブライダル業界の60%近くの会場が、納入業者に50%近くの手数料を課しているからに他ならない。

末端販売業者が、納入業者に50%もの販売手数料を課せば、商品原価は押して知るべしであり、商品価値からしても決して適正価格にはならないであろう。

物には価値があり、価値と価格は比例するべきである。しかし、その価値は、本来、売り手が押しつけるものではなく、買い手が決めるものである。「その値段で売って恥ずかしくないですか?」というようなものを売ってはいけない。しかも後出しでそれしか選択肢がないとは言語道断である。

この情報社会の中で、お客様は、ブライダル業界に不信感を抱き始めている。現状の婚礼のなかで、ジャンルによっては存亡の危機になってしまう会場も多いかもしれないが、このまま円安が続けば輸入品はさらに深刻な状況にもなり、いち早く適正価格で運営が出来る会社の体質を確保しないと業界が取り返しのつかない市場となり、最終的に自分達の首を絞めてしまう結果になるであろう。

 

 

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