連載記事9 サービスの原点

新郎新婦の気持ちや要望を、どこまで把握し理解した上でプランナーがその挙式・披露宴を組み立てられるかが重要なのは当然のことである。しかし、新郎新婦や両家の想い、希望、事情は単純ではなく、その心情まで理解することは容易ではない。プランナー自身に結婚経験が無い場合には、更に難しいであろう。

そもそも、婚礼に携わる者として、新郎新婦の「何かをしたい」気持ちを叶えてあげたいと思うのはあたりまえのはずである。ところが、会場のスタッフの現実はそうではないことが多い。

数万円の費用ならこれくらいで勘弁ということもあるが、数百万円の費用をいただくわけで、「お客様の満足」という成果のためにプライドをかけるのがプロであろう。基本的なことだが、会場スタッフは、誰からお給料を貰っているのか真剣に考えたほうが良い。言うまでもなく、それはその会社の社長でも上司でもない。まぎれもなく新郎新婦である。

例えば、打合せを見ていて、プランナーが誰に気を使っているか察しがついてしまうことがある。特に、ホテルのような組織だと、宴会予約(婚礼予約)、宴会サービス、調理の3つの部署のセクショナリズムが、歴史のある古い体質のホテルであればあるほど、新郎新婦の要望を妨げる結果となってしまう。

調理もサービスも最近は随分と考え方が変化し、新郎新婦寄りになってきたところが多くなってはいるが、やはり自分たちのやりたくない理由を探して、文句を言っている人たちが多い。特にホテルでは、結局のところ「めんどうくさい」というところに行きついてしまう。こんなことではプロ意識などどこにもないということになる。

その結果、これを受けると誰かに文句を言われるという類の理由で、お客様の要望を叶えることが出来ない。本来、新郎新婦のために仕事をしなければならないのに、目線は常に新郎新婦には向いてない。そんな状況では、良いサービスなど出来るわけがない。

また、自分たちの商品ラインナップの中から選択しないことは、「わがまま」と解釈してしまい、わがままな客は気に入らないということで、ややもするとぞんざいな扱いをしてしまう。

しかし、結果的に大金を支払う顧客ほど、俗に「わがまま」なお客様かもしれない。しかし、よくよく考えてみると、「わがまま」ではなく、それはそのお客様の権利だと思う。

ゆえに、相談されることや考えることが面倒くさいと思うような人は1日も早くブライダルの仕事を辞めるべきだ。婚礼は、消費金額から考えても、顧客の要望通りのものを用意するスタンスがあってしかるべきである。

また、営業や企画が現実の顧客像を理解していないと、価格の基準やリーズナブル性すら判断できず、感覚だけで値付けをしてしまいがちである。ブライダル業界は特殊ではあるが、一般的に現代はバリューが重要であり、バリューが高くなければ商品は売れない。

新郎新婦の価値判断基準に合わなければ、時代錯誤な商品構成となり、結果売れない商品となる。さらに、バリューの低い商品だけで構成された商品ラインナップの中から商品を選ばせると、持ち込みやコンプレインを誘発してしまう。

作り手は「井の中の蛙」であることを認めたがらないが、自分本位の判断でそれが正しいと主張する人が権限を持つと、その時点でその会場の商品は、顧客満足の得られない商品群となってしまう。

スタッフが新郎新婦に目を向けなければ、お客様はそのことをちゃんと察している。そこに、いくら笑顔があってもそれは同様である。

今の時代、口コミの力は非常に大きく、披露宴もリピートビジネスなので、会場は、今一度、「顧客満足のために仕事をする」というサービス業の原点に立ち返るべきであろう。

 

 

 

 

 

 

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