連載記事23 120%の完成度がプロ中のプロ

先日、お取引先のホテル様の会合に参加させて頂いた時に、久々に共感を得た講演を聞いた。「プロ中のプロ」という題目で、大手テレビ局の野球の実況担当などで活躍されたかなり有名な方のお話だったが、現代のホテルやサービス業には、本当に大切なお話だと思った。

特に、私が共感を得たのは、「プロの完成度は常に120%を目指さなければならない」というところで、この連載でも以前に書いたが、私も常日頃コンサルティングなどで、サービス業の満足は、100%は当たり前、120%を達成して初めて、素晴らしかったと感動して貰えると言っており、なぜか120%という数字まで同じだった。

私が、横浜のホテルのオープンスタッフで、宴会部の責任者をしていた当時、いくつかのホテルウエイがあった。それは日本一のホテルを真剣に目指すため、常にアソシエイツとして自分たちのスローガン的なものであった。その中には、Be crazyやNever say Noという言葉があったり、常に携帯を義務付けられていた名刺サイズの冊子には、Value, Vision, Missionという要するにプロとしての心得が書いてあった。

15年も前の話であるが、組織の上から下まで共通の価値観と目標を持ち、プロとしての使命を果たすという心得があり、約1000名の社員とホテルに関わる人たちが、同じベクトルで行動すれば、大概の目標は叶うであろうと思った。

当時を振り返ってみると、本当に良い経験をさせて頂いたと今でも感謝している。
現在、ブラック企業が話題を賑わしているが、勤務体系や勤務時間だけを取り上げると、昔からサービス業界はブラック企業だったと思う。しかし、職場には、思いやりや愛情、助け合いがあり、現代のブラック企業に見られる精神面での殺伐さはなかった。

私自身も、健気にも当時は本気で日本一のホテルにしたいと思っており、少なくとも自分の担当部署だけでもそうありたいと真剣に思っていたので、朝まで仕事をして、椅子をリクライニングさせて1~2時間の仮眠をとって1日のスタートをきることも週に何度かあった。

私の最も尊敬する外国人の総支配人は、「責任者は常にwalking, walking, walking」だと教えてくれた。なので、彼も私の事務所を訪れる。常に前述したような体制で仕事をしているので、夕食を済ますと睡魔が物凄い勢いで襲ってきて、私が椅子をリクライニングさせて寝ていると、GMがやってきて、「What are you doing?」と寝ている私と周囲に向かってわざと質問する。私も常に熟睡しているわけではないので、片目を開けて、「I am thinking.」と答えると納得しない様子ではあるが、OKといって首をかしげながら帰って行く。

これもWalkingするGMの、全てを熟知した思いやりだったと思う。そして、私も彼のそういった思いやりに、これじゃいかんと襟を正し、そこに、言葉にはしなくとも強固な信頼関係が生まれていたような気がする。

このような考え方は、所謂「職人気質」という言葉で表わされるものである。戦後の日本が高度成長期をへて経済大国になれたのも職人気質のなせる業であったと思う。ある時期から、企業にとって職人は嫌われ、何でも幅広く仕事をこなす人材が求められてきたが、以前にも申し上げた通り、何でも出来るという人ほど結果的に何にも出来ないことが多い。

サービス業に限った事ではないが、現在は境目を失っているような気がする。プロと素人の境目、普通と詐欺の境目など、境目を失うことでその本質がどんどん薄まり、本物を見失ってしまう。
私は、約30年間、ブライダルを通して世の中をみてきたが、時代背景によってトレンドは変化しても、トレンドによって本質を変化させてはいけないように思う。
その為にもプロの存在が必要であり、「プロ中のプロ」を育てることが今後の企業にとって重要な課題であろう。

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