連載原稿72 ビジネスの落とし穴

最近、YouTubeなどで、高齢者のパフォーマンスが、PRされているが、そのレベルの高さは、微笑ましさを超えて、驚嘆するほどの域で、90歳の60m走や86歳の床体操など、目を疑うような元気ぶりである。

 

このような映像をみていると、「寿命」というものを考えさせられる。

生物の寿命は、種によって大きく違うが、人間の長寿記録は122歳の女性で、存命中では、日本人の大川ミサヲさんの116歳だそうだ。

 

人間は、動物の中では長寿の方なのだが、植物で調べてみると、カリフォルニア州ホワイトマウンテン山脈の和名グレートベースンイガゴヨウマツは5000歳を超すし、有名な屋久杉は、樹齢3000年を超すものもあると言われ、幹周16m、樹高30mほどもある。気が遠くなるほど長い期間続く、生き物の寿命というものの凄さをつくづく感じる。

 

皆さんはご存じだろうか、飛騨高山にオークヴィレッジという家具製作会社があるが、この会社の理念は、「100年かって育った木は100年使えるモノに」だという。代表の稲本氏は、木は伐られても、それだけの年月を作品として生き続ければ、その間に充分森を育てることができるのだという。

 

また、木を育て、森を作ることは、生態系を豊かにする。稲本氏のお話をきいたことがあるが、東日本大震災で命を奪われた稲本氏の友人の漁師は、海で魚を捕る時間以外は、森を作ることに専念していたという。森が豊かになると、森の豊富な養分が川を伝って海に流れ込み、魚介類が育つのだ。だから、魚を育てるためには、森を育てないといけないと言っていたそうだ。

 

私は、ビジネスも同様だと思う。ある業界を育てるためには、もしくは、それが安定的に長く続くためには、目の前の利益だけを追求しては絶対に駄目だ。それではいずれ資源は枯渇するし、消費者から支持されなくなり、竜頭蛇尾な、その場限りのビジネスとなってしまう。

 

ベンチャービジネスという言葉が現れてから久しく、ベンチャーによって、進化したこともたくさんあるが、「簡単にできるビジネス」という理解になってしまうと、非常に危険である。5年や10年で成就達成しようと考えて行うビジネスは、結果、3年~5年で終焉を迎えてしまうであろう。

 

日本の漁業をみても、海に囲まれ、無尽蔵の水産資源に恵まれているようであっても、高度成長期に、一方的に捕るだけの漁業の先行きを考え、「捕る漁業から育てる漁業」をスローガンに養殖が進歩してきた結果、今では、陸上でマグロを卵から完全養殖できるまでになり、継続的な技術発展のもと、新しいビジョンが示されつつある。

 

そういう意味では、ホテルビジネスは、本来、種をまき、苗を育てるビジネスである。特にブライダルは、ビジネスを通して、顧客に社会の常識と通過儀礼の意味を教え、より大人へと成長させることに寄与し、ひいては生涯顧客を育て、リピータービジネスを成立させるものである。

 

そのためには、ブライダルのスタッフは、婚だけではなく冠婚葬祭全ての知識、経験が必要であり、過去は、必然的に、ブライダルセクションは他のセクションに比べ年齢層が非常に高かった。

 

現在は、スタッフの年齢層は下がっているが、何となく対応できていることで、ビジネスがまともに出来ている、成立していると思ってしまうと、そこには大きな落とし穴があることを認識すべきであろう。

 

ホテルは、婚礼を機に生涯顧客を確保すべくブライダルを捉えており、正にオークヴィレッジの理念と共通するものを感じる。

将来の日本のブライダル業界がどうなるか簡単に予想はつかないが、私は、その中で最終的に生き残れるのは、ホテルだと思うし、ホテル大好き人間なので、そうなって欲しいと切に願う。

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