連載記事38 ホテルブライダル復活の時

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1992年8月に施行された事業用定期借地権により15年程度の事業定借で用地を借りている婚礼特化型会場は、その期限を迎えるところが多い。資金力のある会場は、より条件の良いところに移転したりしているが、最近は身売りする会場も目立ち、その引き受け先を見ると、婚礼特化型会場や互助会が多く、寡占化傾向が見え隠れしている。

婚礼特化型会場は、当初は、アクセスよりロケーションと言われ、不便な立地でも、その会場のハードの魅力で受注を伸ばし、小規模ながらかなり高利回りな投資案件であった。

つまり、アクセスの悪い立地は地代も安く、更に、建築費を削減したハリボテ建物でも、外見上は新婦の夢を実現させる魅力があり、室料なども高額設定だが、結果として集客ができたということである。

マーケティングという見地から言えば、良質なものだから売れるとは限らず、ハリボテでも顧客から見て魅力的でヴァリューの高い商品に販売力があるのは当然であり、ビジネスとしてはかなりの成功事例であるといえよう。

しかし、このような会場も、数が多くなるにつれて、会場のハード部分が魅力的なことは当たり前になり、アクセスの良さが重要なニーズとなる中、資金力のある会場は利便性の高い場所へ進出できるようになり、いよいよもってホテルはブライダル部門において、危機感を持たなければならない状況になってきた。
ここで本来の婚礼特化型施設の魅力を考えてみると、庭付き、プール付き、貸切感、占有感、1棟建ての3バンケットでも当日新郎新婦同士が会わない運営というような事だと思うが、大型の会場となるとホテルと同じビルインの会場であり、ホテルとどこが違うのだろうか。

ホテルのブライダル部門の将来がどうなるか、ホテルファンの私にとって非常に興味深く、私の中では最大の関心事でもある。

横浜の激戦エリアでは、4バンケットや7バンケットという大型の婚礼特化型会場が建ち、ホテルもブライダル部門はプロデュース会社や婚礼特化型会場が運営を行うところが増えてきて、このエリアにおいては、ホテルブライダルも奮闘する一方で、いよいよもってプロデュース会社と婚礼特化型会場の一騎打ち的様相を呈してきた。

一般的に利便性の高い場所への出店は、初期投資が大きいため、回収金額も大きく、今までと同じ利益、もしくはそれ以上の利益を得ようとすると、これまで何度か述べてきたような、400万円の初期見積が800万円になってしまうような現実が頻発することは、利益を確保しようとするものの考え方としては必然といえよう。

ホテルのブライダル部門の他企業による運営は、利益率の低い婚礼部門にとって、かなりの増収になっても、他社が運営を行うことで、2つの企業で利益シェアをするわけで、ホテルが現状より利益を上げることはどう考えても不可能である。仮に売上が1.5倍になったとしても、ホテルが現状より増益することは非常に難しいであろう。また、現状で売上を1.5倍にすることなど、この時代、不可能に近いことは誰にでも理解できよう。

ホテルの場合、ブライダル部門の売上の他部署への波及効果は大きく、その効果で全体に増収増益するという考え方もある。しかし、ホテルにとって最も重要な生涯顧客を失ってしまうような短期的利益追求をしてしまっては、例えば、150%程度の増収では元も子もないという話であり、その程度の増収なら現状の方がまだましであろう。
こんな時代だからこそ、ホスピタリティにおいてサービス産業の頂点に君臨する、もしくは君臨しなければならないホテルは、本質がどこにあるかを熟考し、今がまさにホテルブライダルの復活を果たす時期なのではないのだろうか。

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