連載記事37 スピード結論だけでは実力ならず

今年の冬のボーナスは、アベノミクスの恩恵で、バブル並みの伸び率で好調な企業が多いという記事をみた。しかし、これは一部の企業の話であり、決して日本全体が好景気なわけではない。
そんな中、大手電機メーカーで、毎年、会費を募って部内で行われていた忘年会が、若い連中から「お金がもったいない」との声が上がり中止になったという記事があった。先輩が、俺が奢ってやると言っても、「お互いさまなので無理しないでください」と一蹴されたという。

これは、人間関係やコミュニケーションを、損得と並列で考えてしまうことで、私たち世代は非常に戸惑ってしまう。コミュニケーションを取ることにお金を使うことがもったいないと考えることは、換言すれば、コミュニケーションよりお金の方が大事ということだ。こうした現実をどう考えればよいのか、これが日本全体の傾向だとしたら、今後日本はどうなって行くのだろうかと不安になるのは私だけだろうか。

忘年会は、一年の慰労会として、行うことが当たり前と認識してきたが、今の若者にとってはそうではないらしい。
その指向は、結婚式の現状と非常に似通っていると思う。つまり、今の若者の指向が、結婚式のあり方に反映しているのである。
私は、ブライダルを通して社会を見てきたが、今の時代は、自分の損得が基準で、結果を性急に得たがる傾向が非常に強いように見えるし、何事に対しても結論までの時間が短い程良いと考えられているように思う。

webが社会に氾濫するにつれて、社会の全体的なスピードが速くなっている。ITというワードが出た頃から、社会のスピードの速さについていけない人が多く見受けられたが、そのスピードはどんどん加速されていった。
今現在がなぜあるか、それは何が基本で、何が良いか悪いか、何が必要か不要か、何が大事で何がそうでないかなど考えもせずに、そのときの風潮に流され、その場からの逃避によって、地滑りのように一気に過ぎてしまったために、大切な部分を置き去りにしてしまったようだ。

日本には、温故知新という言葉があるが、もう少し過去を大切に考えるのも必要な時期なのではないか。
子どもの成長プロセスである反抗期に、親は「誰のおかげでここまで大きくなった」とつい口に出してしまいたくなる瞬間があるが、正に、なぜ今があるのかということを、立ち止まって少し考える時なのではないかと思う。

私は、新郎新婦と直接契約するプランナーの立場で、様々な会場とお話をする機会があるが、企業として歴史の浅い新規開業の会場と、長く営業しているホテルでは明らかに対応が異なる。同じ婚礼ビジネスを行う会場でも、一度限りのビジネスと考えるか、生涯顧客獲得ビジネスと考えるか、電話ひとつとってもその対応は大きく違う。そのニュアンスは、常識や社会経験がある程度あれば一目瞭然だ。

早くビジネスの結論を出すことは重要なことかもしれないが、現状を見るとサービス業全体が一緒くたになっているような気がする。今のビジネスは、物事の結論を短期間に決定することに価値があり、それが実力だと勘違いする傾向がある。そうした経営者の考え方が、決定期間が短いことへの価値観を生み出したが、それは決して良いことばかりではない。世間の風潮に流されることなく、ホテルとは何なのか、顧客のためにどうあるべきなのか、今一度原点に立ち返っていただきたい。

何もかもが短絡的な結果だけを追い求め、本質を見失っている現代ではあるが、婚礼は人生で最も重要な通過儀礼であり、これに関わることによって顧客のその後の人生にまで関われるビジネスチャンスであるということを改めて認識する必要があろう。

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