連載原稿83 LGBTから考える本質

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何もかも充たされたバブル時代が崩壊して、その真逆の時代に移行してから四半世紀が過ぎたが、世の中は、本質に向かって動き始めているような気がする。

 

昨年の流行語大賞には、「ありのままで」が入っていたが、今の世相を反映するとともに、現代の若い世代の消費者特性もよく表わしているワードだなと思う。また、流行語10位に入った「レジェンド」が注目され、日本の職人を取り上げるテレビ番組も多数放映されるなど、プロの仕事が注目されるようになっているようだ。

 

さて、世相と言えば、「LGBT」というワードはご存じだろうか。

女性同性愛者(Lesbian)、男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexual)、そして性転換者・異性装同性愛者(Transgender)の人々を意味する英単語の頭字語であり、欧米の先進国では、LGBTの市民権はほぼ確立されている。

 

先日、日本でも市民権を得る活動をされているon the Ground Projectの代表の市川武史さんの話を伺ったが、目から鱗といったお話がたくさんあり、自分の誤解や認識不足に気づかされた。

 

市川さんによると、LGBTに関しては、色々な個々の情報が、いっしょくたに考えられており、誤解を招くことが多いという。

実は、LGBTには、3つのタイプがあり、生まれ持った性に対して、1つ目は、好きになる相手が同性という方、2つ目は、心の性が一致しない方、3つ目は、身体の性が一致してない方だそうだ。

また、他に性的指向が無く、異性愛者としての性質も同性愛者としての性質も持たず、恋愛感情や性的欲求を抱かない「アセクシュアル」という方もいるという。

このようにタイプ別に分類して考えると、非常に理解しやすい。

 

私は、今、くも膜下出血による後遺症で、身体障碍者手帳を有するれっきとした障碍者であるが、障碍者について、実際に自分がなってから初めてわかったことがたくさんある。

 

LGBTの方も同様で、なかなか理解されず、色メガネで見られたり、解決されない問題も多いようである。人は誰でもそうだと思うが、自分が直面しないとなかなか本腰を入れて取り組まないのも事実であるが、その現状を知ると、人ごとだから関係ないとは言えないと思う。

 

というのも、電通総研が2012年に全国の20~59歳の男女約7万人を対象に行ったアンケート調査によると、LGBTは5.2%(3637人)を占めたという。5.2%という数値は、決して無視できる値ではなく、ビジネスの観点からもLGBTの方達に関する認識を得ておく必要があるだろう。

特に顧客の満足を得ることがビジネスであるサービス業において、顧客の5%がLGBTであるとなると、その人達を満足させるか、少なくとも気分を慨することだけは避けないと、相当数のビジネスを失うことになる。

 

ブライダル業界に関しても、同様であり、無婚時代のビジネスにおける5.2%は、非常に大きな割合と言える。

 

求められるのは、あくまで自然な対応、普通の対応であり、決して特別扱いではないが、その「普通の対応」こそ、予備知識がないと、その場に直面した時、意外と難しい。

 

あるホテルで、LGBTの方がチェックインの際、フロントクラークが、ダブルベットでご予約されていますが、本当にダブルベットでよろしいですか、という質問をして、大変傷ついたという事例もあるようだ。

 

私もホテル時代に、身体障碍者に対する講習を受けたことがあるが、現在の私もそうだが、障碍者は、健常者以上のことをしてもらいたいのではなく、健常者と同様の快適さを得られればよいのであり、そこにちょっとした気遣いがあれば嬉しいのが真理だ。

 

積極的にLGBTの取り込みを行うかどうかは別にして、現状の規模感で言うと対応せざるを得ないし、常識やモラルの観点からも、ビジネスの観点からも積極的に学び、理解することが賢明だと思う。

 

 

 

 

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