連載原稿 91回 最終回

連載記事

今、世間は神奈川県の中学生殺人事件のニュースでもちきりだが、この衝撃的事件とは真逆の感動的な動画を、YouTubeで発見した。野生のヒョウが、猿を襲い、樹上に持って上がったのだが、その猿には生れて間もない子猿がしがみついていた。ヒョウが気づき、襲うのかと思いきや、なんと、ヒョウは赤ちゃん猿を愛おしそうに舐め、猿はヒョウの懐で眠りについたのである。

自然の摂理には、無駄というものは存在せず、弱肉強食の社会でも、生命を維持するためのみに食すという行動が生れる。狩猟で獲物を獲得できる確率も非常に低く、ヒョウは、この時相当空腹だったはずだ。ところが、このヒョウの中で、空腹より母性本能が勝ったのであろう。現代の人間にも勝る行動だと思った。

人間の社会や会社運営において、生きること、存続することに必至な現代社会ではあるが、他人を思いやる気持ちや人の心は企業にとっても最重要要素だと思う。「企業は人なり」とはまさに真理だと思う。

私は動物が大好きで、よくこういった動画を見るのだが、感動的であったり、微笑ましかったりする一面、本能というものが失われているのではないかという気がすることもある。ネコとヒヨコが仲良くしている動物の社会も、非婚化が進む人間の社会も、相当変化しているように思う。

ブライダル業界もここ数年で大きく変化したと思うが、その原点は、子孫繁栄という人間の本能に基づく特性の変化にあるのかもしれない。

急激な少子高齢化という世界に類を見ないパラダイムシフトが起こっている日本で、業界が発展し続けるためには、今がブライダルの変革の時期であある。

人財を確保し、教育をしっかり行い、優良な企業人財を作り上げることこそ、将来に向けての企業の最重要施策であり、その実現を果たした企業こそ成功する企業だと確信する。

私も、会社人としての残り人生をブライダル業界の発展のために尽くしたいと思っている。

思い返すと、私が30歳前後からお世話になったホテルは、当たり前のことだが、数字が全てで、「数字だけでビジネスプランを作れ」という指示であり、タイトル以外、文章は殆ど認められず、B4版の用紙60ページにも及ぶビジネスプランは、羅列された数字のみであった。

当時サービス馬鹿のホテリエだった私にとって、めちゃめちゃ難易度が高く、東大法学部卒で占める経営陣の脅威とも思え、気が狂いそうになるほど衝撃的なものだったが、提出6回目にして受理された時、その数値だけで私のストーリーが完全に理解された喜びは、20数年たった今でも鮮明に覚えている。

この経験が、私に「数値的根拠」の大切さを教えてくれ、今でも、何か物を言う時には必ず客観的事実を示すようにしている。

私なりの業界貢献の方策のひとつに、フリーランスウェディングプランナーの育成がある。8年前、厚労省が発表する人口動態調査の数字を見ていて、業界の行く末に危機感を感じ、考えあぐねた末、フリーランスに辿りついたのだ。先輩には、装置産業で成り立っているブライダル業界に、フリーランスが存在する隙間はないと言われたものだが、今や時代は代わりつつあり、必ずお役に立てるようになるものと確信している。

2年前の4月にスタートした連載も今回が最終回となった。勝手気ままに執筆してきたが、読んで下さった方々には、大変感謝しております。2年間という短くも長い期間本当にありがとうございました。

私は、ブライダル業界で生きてきて、これからもこの業界で生きて行くわけで、その業界が、素晴らしい業界であることを願うのはごく自然のことだと思うし、一度失いかけた命を業界のために使えればと思う気持ちに嘘はないと思っております。

 

 

こちらもご覧ください

最近の記事

TOP