連載記事33 人手不足という前に人材育成を

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サービス業の現場の人は、日常業務に追われ、肉体的にも精神的にも疲労困憊状態のようだ。しかし、追われるばかりだと、目の前の業務をこなすだけが仕事となり、クォリティが下がるだけでなく、仕事の醍醐味や満足感など、本来必要な、次の仕事の活力となる大切なエッセンスのようなものを感じることなく日々を過ごしてしまうことになる。

私のモットーは「楽しくなければ仕事じゃない」で、28歳くらいからこのモットーを基本に仕事に取り組んできた。しかし、現在の若い方は、仕事が楽しくなる前に辞めてしまうような気がする。時々、自分の天職を探しているという人がいるが、殆どの人にとっての天職は、見つけるものではなく、自分で作るものだと思う。仕事が楽しくなるのには、時間も努力も経験も必要であり、始めて1年や2年で楽しくなるような仕事は、むしろ長続きしない仕事かもしれない。

私が、銀座東武ホテルのオープンスタッフとして勤めていた頃を思い出しても、同僚や上司に恵まれたこともあり、出勤するのが本当に楽しかった。当時はまだ、暴力団新法の施行前だったので、この類の宴会を担当した時などは、憂鬱で出社拒否したくなるようなこともあったが、おしなべて楽しいホテルマンライフを送っていた。

実は、当時の仕事量は、総量からしても時間的ボリュームにしても、今、現場のプランナー達に話すと皆驚愕する程のもので、現在よりもずっとブラック企業的要素をはらんでいたと思うが、そうした意識は殆ど感じることなく、仕事をすることに満足していたと思う。

15年から20年前のブライダル市場と比較すると、婚礼施設は明らかに増え、プランナーの総数は増えている。若者の間ではプランナーは人気の職業であり、複数の大手ブライダル関係の企業で、年間1万人以上ものプランナー希望者の応募があるという話は、何度となく聞いている。それだけの応募があるのであれば、プランナーの勤続年数が平均2.5年と言われている状況であっても、人員は確保できていると理解していた。
ところが、現状は人手不足であり、プランナーに加えて、現場の責任者クラスの人材が随分不足しているようだ。
当協会にも、様々な会場から求人の依頼が多く寄せられ、ご協力させて頂いているところもあるが、人材が本当に不足していることを肌で感じる。

我々ホテルマンの古き良き時代には、ヘッドハントされてホテルを移ることが、給与アップの最も簡単な手法とも言えた。そういう目標があるから、苦しい時にこそ耐えて仕事をこなし、ヘッドハントされるチャンスを待っていた。
ホテルを移ることに対して、転職という意識は低く、日本のホテル全部が一つの企業体で、その部署間の移動くらいにしか感じていなかった。終身雇用が基本であったころから、ホテルマンの転職は常識であった。

しかし、今プランナーを辞めた人の多くは、その会社が嫌だから辞めただけでなく、ブライダル業界自体が嫌になり、ブライダルから離れて異業種に移ってしまうのである。

単純に20年前と比べると、婚礼会場は3割~4割ほど増えていると考えられる。しかしプランナーもこの間に順調に育っていけば、相当数のプロフェッショナルが育っているはずである。しかし、このような人手不足の状態なのはなぜなのだろうか。

つまり、人気職種であったプランナーだが、こんなにも人の新陳代謝が激しい業界になり、常に人手不足の会場が多いという現実があるのである。安定的な経営をするためには、やはり優秀な人材の確保は必要であり、企業は、駄目な人材だから切り捨てる、もしくはその方向に仕向けることも必要だが、もっと人材を育てることに着眼すべきなのではないのだろうか。

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