連載記事44 現場経営者を経営者的思考に教育する

現代社会は、実戦なくして机上論が先行している。

一見雄弁に思えるコンサルタントを名乗る評論家が市場に増えると、その評論家の話に企業が耳を傾け、現場のエキスパートをいじめのターゲットにしてしまうことがあるが、その理由の一つは、現場にプロがいなくなっているからではないだろうか。

現場の実践経験のない人間が、どうしてそんなに現場のことが分かるのか、そして語れるのか理解できない。中には、現場をかじった程度でしかないのに、「ホテル業界にはマネジメントできる人間がいない」と吐き捨てる輩もいる。

そういう輩のいうことは、現場経験のないホテル経営者にとって、時に新鮮かつ斬新に映るかも知れないが、あくまで机上論であり、実践を無視し、妄想に近い意外と中身がないことに気付いてほしい。

勢いや雄弁さに騙されてはいけないし、短期的に業績を上げることは、手段を選ばなければ、そう難しいことではないが、気をつけなければいけないのは、得た以上の損失を生み出してしまう負の可能性だ。

婚礼はホテルの生涯顧客の確保の大きな窓口であり、その婚礼を乱暴な方法で受注したら、決定数は増えたが、キャンセル数も増え、キャンセルした顧客はそのホテルの生涯顧客にはならないということになる。

顧客はそんなに馬鹿ではない。

本来、食事や宿泊に来てくれるはずの顧客が、婚礼のキャンセルという結果を期に、二度とそのホテルには足を運ばなくなってしまう。

生涯顧客を確保することも目的である婚礼で顧客を失ってしまっては元も子もないというか、全くの本末転倒である。

乱暴なオペレーションの理論では、キャンセルが出るのは当たり前と考えるのだろうが、市場によって、また、理由によっては、少数のキャンセルが大きな影響を及ぼすこともある。

私は今まで、就職して十数年間は東京、その後、縁あって横浜で働くことになった。横浜は、東京の次に人口の多い大都市だし、東京駅から東海道で4駅、25分程度のところなので、東京の市場と全く同じだと考えていた。

しかし、程なく、横浜の市場は、東京とは全くかけ離れた市場であり、市場規模は大きいが、世間は非常に狭いことに気付いた。私は幸か不幸か若いころから積極的にコンプレイン処理をやってきたので、横浜へ行った頃には、コンプレイン処理ではベテランと言える件数をこなしていた。横浜のホテルはオープンだったので、ご多分にもれず当初コンプレインは多かったが、「横浜の世間の狭さ」というものを、そのコンプレイン処理を通して体感したのであった。

東京と至近距離にある大都市横浜でさえこの状況であり、東京以外は、世間は狭く、評判は、良くも悪くも広がりやすい。

今や日本中、世界中にwebが蔓延し、全体が、無責任、言ったもの勝ち的な感覚に支配されており、ブライダル市場もその影響を受けてか同様の傾向にあると考えられる。しかし、ブライダルビジネスは、このwebの時代にあっても、web以外で人から人への口コミ効果は大きく、評判は、世間の狭いエリアでは非常にセンシティブな問題であることを意識しなくてはならない。

私も含めて、常に大都市東京を基準にものを考え、webの世界が常識と考えがちだが、世間の狭い市場では口コミを十分に考慮した戦略で臨む必要がある。とにかくホテルにとっての評判は、重要なので十分な配慮が必要だ。

会場のカテゴリーにもよるが、ブライダルは究極のところ「人」であり、即決できる能力も重要であるが、特にホテルの場合、CSがベースにあることを忘れてはならない。また、現状の現場経験者を、経営者的見地で物事を考えるように教育すれば、ゆるぎのない企業を創出することが出来ると思う。

 

 

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