連載原稿64 挙式披露宴の必然性

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トルコのアンタルヤは、地中海に面した、ヨローッパ人には知名度の高い世界的な高級リゾート地である。IWPA国際ウエディングプランナー協会では、現在この地にある古代遺跡の前で結婚式をするリゾート婚を企画中であるが、現地の方と話をしていると、世界には様々な結婚式があり、それぞれに納得できるしきたりがあることに改めて気づかされる。

 

トルコの結婚式は、何百人単位で披露宴に出席するという。食事は、フィンガーフード程度のものを大量に用意し、誰でも出席できるので、列席者が1000人を超すことも珍しくないらしい。

 

フィンガーフードとはいえ、出席人数が多いと相当な費用になると思うが、全くお金の無い新郎新婦でもためらいなく披露宴を行うそうだ。その理由は、トルコでは、披露宴を行うことによって、大金持ちとは言わないまでも小金持ちになり、全くお金のない新郎新婦でも、新生活をスタートする資金ができるという。

 

というのも、披露宴に出席する人が、お金や金貨、金のブレスレットなど、その人の生活に応じて、数千円から十万円まで日本でいうところのご祝儀を持ってきて、新郎新婦の衣裳につけてあげるという習慣があるのだ。「新婦の体重と同じ重さの金を貰わなきゃ」という言い伝えもあるようで、結婚式は、2人の旅立ちをサポートするという重要な意味があるようだ。

 

トルコ以外でも、結婚式に同様な趣旨がある国は多い。

ところが日本の披露宴では、本来の主旨は、新郎新婦の新しい人生のサポーターをつくるということであったはずだが、日本の婚礼が、ビジネスとして世界に類を見ない装置産業になってしまったためか、現在の経済低迷、貧富の格差のある状態では、お祝金ではとうてい賄えない高額商品が主流となり、ブライダルローンなどという、サポートどころか結婚式によって借金を背負わせるものまで出現している。このような状況下で、挙式・披露宴の件数を増やそうとしても、そこにはやはり無理が生じてしまうであろう。

 

ブライダルをビジネスとしてとらえることは、我々ブライダル関係者にとって重要なことであるが、そこにはやはり理念や倫理は必要であろうし、本来の挙式・披露宴の意義や本質を、我々がもう少し深く理解し、世間に伝えることが出来れば、結婚観も変わり、実施件数も増えるのではないかと思う。

 

今の世の中は、ひっかかる方が悪いという怪しい物が溢れており、消費者は気を許すことができない。オレオレ詐欺、アカウント乗っ取り、賞味期限偽装、そして私にも、毎日のように詐欺メールが届く。件名は、「三菱東京UFJ銀行本人承認サービス」、内容は、「安全性認証を更新したため、アカウントが凍結されないように、直ちにご認証ください。」といったものである。よく見ると差出人のメールアドレスがあり得ないものであったりするのだが、Webに疎い人がこのようなメールを受け取ったら、大手銀行から来たメールだと思って、怪しいURLをクリックしてしまうだろう。

 

日本の社会全体が、今や、個人としても企業としても、言った者勝ちというようなことが蔓延し、責任の所在がはっきりしなくても問題なくビジネスが出来てしまう社会の中で、全てがアバウトで、無法地帯になっている。消費者は、何も信用できない、という状況だ。

 

しかし、これがビジネスの有効な手法だという考えを、なんとかブライダルでは食い止めたい。利益追求がここまで浸透してしまった現状ではあるが、会場側がビジネススタンスを見直し、カップルの直面する問題とブライダルという商品や本質を理解し、挙式・披露宴を行うことの必然性を強調すれば、挙式・披露宴を実施するカップルは増えると確信する。

 

 

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