連載原稿76 個々人の人を思いやる心が社格となる

以前から何かと問題になっている「いじめ」だが、2013年に文部科学省が実施した問題行動調査で、全国の国公私立の小中高校、特別支援学校で認知されたいじめ件数は18万5860件だったそうだ。前年度に比べ減ったとはいうものの、全国的に、依然高水準で推移している。

 

私の子供の頃を振り返ってみると、やはりいじめは存在していた。私もある時期、いじめられた経験もあるが、正直いじめた経験もある。

 

その中で、中学生の頃、私の遊び仲間6人のうちの数人が女生徒をいじめ、その女生徒が、北海道の真冬に上着も着ないで学校から姿を消し、近くの岬で佇んでいたところを発見されるという事件があった。

 

そのときには、直接いじめをしていない私も含め、徒党を組んでいた6人全員が呼び出され、担任の前に直立不動させられ、何度も何度も担任から往復びんたされた。「お前ら、びんたが痛いか、どうなんだ、返事をしろ!」と言われ、全員「痛いです」と答えると、担任は、「でもな、F子(いじめにあった女子)の心はその何倍も痛かったはずだ」と言い、その後も何度もびんたされたが、その担任の目は、涙で一杯だったことを今でも鮮明に覚えている。

 

私は6人のリーダー格で、担任とは大の仲良しだったからか、その後、1人だけ職員室に呼ばれた。担任は、諭すように、「お前が直接いじめていないことは知っているが、見ていた事実はあるだろう。なぜ、そのときに止めなかったか。先生の無念さを、お前に感じて欲しかった。」といった。

 

私は、顔が腫れあがるほどのびんたでも涙は出なかったが、担任のその言葉には涙が止まらなかった。中学生というまだまだ子供だった私が、物凄く大切な事を教えてもらった感動に近い物を感じたことを今でも鮮明に覚えている。

 

赤く腫れた顔を両親に見られたくなかったので、雪で顔を冷やしながら、北海道の寒い冬道を、人目をはばかり、汽車の往来を気にしながら線路上を歩いて帰ったが、やはり、家に帰るや否や母親に気づかれ、正直に事情を話したら、「お前が悪い。」と一言。「でもその女の子が自殺とかしなくて良かった。そんなことになったら、人としてお詫びのしようもない。」と言われ、改めて心臓が収縮するような感覚に見舞われた。

 

最近の毎日のニュースを見ていると、日本の治安はこの先どうなるのだろうかと不安になってしまう。

 

何の非も無く一方的に殺されるなど、理不尽極まりない事件が頻発しているが、感情の制御ができない人が増えているのだろうか。そもそも、「理性」というものを持つのが人間の証であり、他の動物と違うところだと思う。

 

今の日本は、様々なことのスピードが速くなっている中で、「早く結果を出さなければ」と目先のことばかり気になり、その場のことしか考えず、許容範囲が著しく狭い。少し前から、「勝ち組」「負け組」という言葉が使われるようになったが、その判断基準も非常に短絡的なものである。

しかし、本来「人と人」との繋がりにおいて成立するのが社会である。

 

ブライダル業界においても、競争が激化する中で、なりふり構わぬ手法も散見される。悪徳商法は論外だが、「法に触れるという認識がなかった」というのも単に言い訳に過ぎず、罪だという意識を持つべきである。

 

「サービス」を辞書で調べてみると「人のために気を配って尽くすこと」と書かれている。とりわけブライダルにおいては、婚礼という人生における最も大切な行事のひとつを取り扱うわけで、それを生業とするからには、己の品格をかけて仕事をするという覚悟を持つべきではないかと思う。

 

「人を思いやる心」はその人の「品格」であり、そこに働く人の「人格」が「社格」となるのではなかろうか。

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