連載89 その場しのぎの対応に未来はない

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因果応報という言葉があるが、物事の結果には、必ず過去との因果関係があるものだ。

自分にとって不利なことや腹立たしいことをされると、相手に怒りを感じるものだが、実は、自分が過去に、その人またはその周辺関係の人に対して何か良くないことをした結果かもしれないという考え方である。

「親の因果が子に報い・・・」というと、現代では差別用語に近いような言葉だが、昔から言われてきたことで、過去に親の行った行為が、子どもの代に結果として表れてくるということを言う。

現在では、悪い行為の結果が身にはね返ってくることを指すことが多いが、元々は仏教語で、行為の善悪に応じてその報いがあることを言うので、善と悪の両方に用いる。

今、非人道的なことや人を欺くようなことをしていれば、今が過去になった時には、必ず悲惨な結果が報いとして訪れるが、逆に、今、人のために素晴らしいことをしていれば、素晴らしい将来として報われるということである。

ブライダルビジネスにおける過去を振り返ってみると、数十年前、我々の時代のホテルウエディングは、古き良き時代のビジネス形態だったと思うし、現代のブライダルと比較すると、ビジネスという一面だけでとらえれば、とても素人っぽく、利益追求という部分での意欲には欠けるものだったかもしれない。

しかし、儲けていなかったかというとそうではないし、顧客満足もそこそこ高く、時代背景の大きなバックアップもあって、我々にって非常に心地良いものであったし、顧客もそう感じることが多かったと思う。

それは、挙式・披露宴は人生最大の通過儀礼としていかに重要であるか、第一線でオペレーションをしている人が、特別意識せずとも、潜在的に認識していたからに他ならない。

通過儀礼は、人生の階段の一段一段を構成しており、生れてから幼児へ、そして成人になり、さらに人生の幅を広げて、常識を持って人に良い影響力を与える大人へ完成されていく道筋の節目の行事である。

その中で最大の挙式・披露宴を扱うものとしてのスタンスや行いが、備わっていたように思う。

ところが、時代の流れとともに、状況は一変した。

ある頃から急成長した、デフレ依存型ビジネスによって、人材育成を怠り人材をぼろ雑巾のように使い捨てた結果、少子化による労働人口の激減もあって、今や、企業は超人手不足である。

我々は、8年前から、会場プランナーの存続を危惧し、フリーランスウェディングプランナーの養成を行ってきたのだが、現在の会場プランナーの状況をみると、予想以上に危機的なのが現実である。

最近では、信じられないような状況が露呈している。

いくら人手不足とはいえ、350万円を超える商品を売っている企業が、美容師や司会者、音響係をにわかプランナーに仕立て上げ、プランナー業務を全て行わせているというのだ。

これをどう考えたらよいのだろう。プランナーが足りなくて困るというので、会場と業者という関係で弱みに付け込み、しっかり教育することもなく、会場が業者に超安価でプランナーを強いているのが現実なのだ。

私は、このことを知った時、怒りが込み上げ、消費者を馬鹿にするにもほどがあると、握りしめた手が震えるほどであった。

今、現場に、本当のプロのプランナーはいったいどのくらいいるのだろうか。

違法ではなくとも、企業の利益や存続のために、新郎新婦を食い物にするようなことがあっていいはずがない。また、理想かもしれないが、本来の上場企業は、どんな時も信頼される立場であるべきで、こんなモラルに反することを行っていることに疑問を覚えるし、上場企業がこんな状態だとブライダル業界の未来は厳しいと思わざるを得ない。

 

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