連載記事12 販売手法と詐欺行為の境界線

先日、事務所で偶然取った電話は、大手SEO会社からのものだった。
大手の会社では、訪問のアポイント取りを外部業者に委託したり、アポイント部隊をパートやアルバイトで運営しているところが少なくない。そこでは、アポイントをたくさん取れる人は時給も高いが、その仕事に愛情があるわけでもなく、その会社の看板を背負って仕事をしているという意識も低い。ただただ「お金」を求めて仕事をしているのである。

私が取った電話は、「私は○○会社の○○と申しますが、社長さんはいらっしゃいますか」と定番の第一声である。企業名を言えば取りついで貰えると思い込んでいる。「どういったご用件ですか」と返すと、「社長さんと話をしたいのですが」の一点張りだ。決定権の無い人間に説明するのは時間の無駄だと教えられているからだ。

私が社長とわかると、次のセリフは、「御社のホームページが素晴らしいので、特例としてSEO対策を行い、成果をWEB上で披露したく、モニターに選ばせて頂いた」である。
ところが、説明を聞くと、結局のところ有料のSEOのセールスであり、成果を公開されても、弊社には何のメリットもないどころか、むしろ迷惑な話だ。モニターといえば、一般的には無料というイメージだろうが、実際は、無料でもなければ、特例でもないのである。
私も過去に詐欺行為にあった経験があるが、高度な詐欺ほど、詐欺にあった方が自分の間違いか勘違いと思いこんでしまうほど巧みである。しかし、嘘は嘘であり、買い手に勘違いをさせるように誘導する販売手法は、詐欺である。
私は、「あなたの言っていることは詐欺のようなものだ」と諭してみたのだが、そのアポインターは逆切れして、「それは、あなたの考え方であり、私たちの考えとは違う」と言ってのけた。

一方的にかけてきた電話に、大切な時間を費やした挙句、こんなことを言われては、私とて平常心ではいられず、非常識極まりないことを告げて電話を切った。

多くの上場企業をグループに持つ企業なのに、この類の販売手法で電話をかけてくる。
この類の電話は、今や普通のことになっており、いつしか販売手法と詐欺行為の線引きもできなくなってしまっているように思うが、企業自体が、詐欺的行為であることに気づいていないのか、業績のために黙認しているのか、その実情は分からない。

電話を切った後、怒り冷めやらぬ状態のなかで、「ちょっと待て、何だかどこかで聞いたような話だな」と思い、気付いたのが、これは、以前からご紹介しているウェディングの現状の問題と同じではないかということである。私自身は、ブライダルにおいてはこのような実体験はないが、協会の相談窓口に集まる様々な新郎新婦の怒りは、まさにこの感じなのかなと思った。

ホテルにいると、決して理解できない感覚かもしれないが、今や世の中は考えも及ばないほど常識や良識を失っているように思う。
前述したSEO会社のような販売手法は、形は違えど、現状のブライダルの販売手法に非常に類似している。
そんな考え方は「古い」、手法は選ばず儲けるのがビジネスなんだからと考える方も多いと思うが、古いか新しいかではなく、良いか悪いかの判断を最初にすべきではないだろうか。

今日も、20数年来お付き合いさせて頂いているパートナー企業の方とお話させて頂いたが、現状のブライダルに本当に危機感を抱いていらっしゃった。

現在、ブライダルの成功者と言われている人に、その危機感は感じられないかもしれない。しかし、現実は確実に数字として現れている。そろそろ業界を挙げて新郎新婦の信頼を回復することを目指し、ウェディングという特質にあった手法で営業・販売を行っていくべきではないかと思う。

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