連載記事53 企業倫理を正すことを消費者は期待している

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このところ、国は、労働条件などに関して、実態に食い込んだところまでの施策を打ち出しているとしているが、机上論であったり、実態にそぐわなかったりすることも多く見受けられる。

 

現在、「残業ゼロ」が再燃し注目されているが、年収1,000万円以上の人を対象に行うなどの但し書きがあるものの、一度導入に踏み切られれば、いずれ拡大解釈され、企業側のいいように判断されて、労働者は、低賃金、長時間労働の波にのみこまれてしまうだろう。

 

ブライダル業界の一部の現実を見ても、年俸制の名のもとに、すでに「残業ゼロ」が実施されているところも多く、それには条件がつけられているようだが、職種やその人の立場・肩書によっては、問題が大きいと思う。

 

この連載でも何度か述べてきたが、このような流れの中で、企業倫理はこれまで以上に問われるようになってきているのだ。

 

また、最近の私の経験では、こんな例もある。

弊社は、小規模ながら複数サイトの運営や個人情報を多く扱っているため、セキュリティに関しては過敏で、企業規模に合わないセキュリティ機器を設置しているのだが、先日、弊社の通信回線の管理をお願いしているある大手の会社から、「弊社のサーバー拡大により、御社のセキュリティ機器のアダプター交換を行うことが必要になったが、無料であり、できれば本日伺いたい」という電話が入った。早急にということで、来客予定があったが、作業は差し支えないというので、すぐに来てもらうことにした。

 

すると、営業と技術者のペアで訪れ、アダプターの交換に書類が必用なため会社の横判をお借りしたいと言うので、初めての会社ではないし、私が接客中だった事もあり、横判だけ預けた。しばらくして、今度は丸判(会社実印)が必要とのこと、では説明をしてくださいと書類を見たらそれはリース契約書で、契約期間をよく見ると、なんと新しいリース契約になっているのである。

無料で部品交換といわれていたものが、60回のリース契約で総額約120万円強の物件にすり替わっていたのだ。品質の向上、今月中なら無料交換(実は作業代が無料)と魅力的なことを言い、リース物件が代わるため契約書の書き換えが必要だという説明で、安易に相手を信用していたら、そのまま押印したかも知れない。後で考えてみると、訪問時にこちらが忙しいのはむしろ好都合だったのだろう。

 

ここで、連想したのが、近頃流行りの「即決」である。この私の体験談を聞いて、読者の方々は「ひどい会社だ」と思ったか「だまされる方が悪い」と思ったかわからないが、これは現在のブライダルにおいて、重要な手法であると思われている「即決」と同じではないか。

「即決」出来ることを勲章のように考えている人が少なくないが、「即決に落とし込むこと」は、ブライダルの本質から考えると真逆であり、結果として、即決後のキャンセル率が高くなっているのも最近の傾向である。

 

先日、弊社に相談に来た新郎新婦は、2件続けて、自分たちで訪問した会場の接客内容に不信感を持ち、信用できる会場を紹介してほしいというものだった。値引きは不安をあおっただけで、この新郎新婦たちは、そのお金を、安心を買うことに使って惜しくないというのである。

 

自分たちの販売手法が詐欺的行為であることに気づかずに行っている人たちも沢山いるのかもしれないが、それをさせている企業の倫理観に非常に疑問を感じるし、この現状を何とか改善することが急務だと考える。

 

上場企業や未上場でも規模の大きな会社に対する社会的な信頼はまだまだ残っている。まずそれらの企業が率先して企業倫理を正し、模範となることを消費者は期待しているのだ。

 

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