連載記事57 多人数催行のウエディングの意義も業界は提案していくべき

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先日、webで「友人の結婚式が『出会いの場』と実感したことがある女性は14.3%」という記事を見た。友人の結婚式でカップルが誕生することがかなり多い欧米に比べ、日本人の感覚からすると正直な数値だと思うが、実際はどうなのだろう。

 

私は、5人兄姉の末っ子で、長男とは15歳、すぐ上の二男とは9歳も離れている。北海道で生まれ育ったので、会費制の婚礼が普通の婚礼だと思っていた。

 

今から40年ほど前になるが、兄姉が結婚した頃は、結婚が決まると、新郎の男性の同僚や友人が5名程度、新婦側からは同じく女性5名程度の合計10名が準備委員となる。その中で、代表として男女各1名が選出され、この2名が代表幹事となり、挙式・披露宴の会費制の案内状は、代表幹事の名前で作成される。

 

この総勢10名が新郎又は新婦の家に集まり、披露宴の内容や進行などを決めていくのである。私は、4人の兄姉のこの集まりを、大変心待ちにしていた。なぜなら、この集まりには、ご馳走がふるまわれるので、子供心にそれが楽しみだったのである。

 

この集まりを何度か行い、披露宴当日を迎えるが、この間に結構仲が良くなり、ここから交際が始まって結婚へ到達するカップルも少なくない。今でいう婚活なのかも知れない。

 

欧米の婚礼では、披露宴に出席するのは、どう考えても婚活が目的ではないかと思われるほどである。例えば、米国ではガータートスとブーケトスを行うのが習慣だが、獲得者は、次の新婚夫婦とばかりにダンスを踊ったり、ツーショットで写真を撮ったり、正にカップル誕生である。

 

you tubeで「Bouquet toss & Garter toss」と入力頂くと、沢山の動画が検索されるので、是非一度、その様子をご覧いただきたい。単純なゲームだが、こんなにも楽しく、こんなにも真剣に盛り上がるのかと、日本の結婚式の余興と比べると不思議なほどである。

 

私は、現場にいたころ、披露宴を、列席者にもいかに実のあるものに出来るかを考えながら、色々なことをお客様に提案し、自分自身も披露宴を楽しんでいた。

あるお客様が、席次表の相談に来られた時、友人席がどうしても共通のテーブルになってしまうので、何とか分けたいという。私は、分けるよりむしろ合同のテーブルにすることを薦めた。聞けば全員が独身だったからだ。

 

新郎新婦には、お二人のウェディングがきっかけで新カップルが誕生するのは幸せなことだし、仕組みましょうよと、いたずら感覚で言ったら、新郎新婦も大いに共感してくれ、今でいう婚活を披露宴で仕掛けたのである。

 

その新郎新婦が1年後に食事&宿泊に来てくれた時、来月結婚式に媒酌人として出席することになったというので尋ねると、その友人席で知り合った2人が結婚するので媒酌人を頼まれたということだった。

 

若者の披露宴離れは、言うに及ばず最近の傾向だが、披露宴という文化が、皆が楽しみにするイベントという性質が薄れ、経済低迷から精神的な余裕までもなくなって、「お金がかかる」という意識だけが強くなり、本来の披露宴の意味や価値が忘れられているのが日本における現状である。

 

現在のさとり世代が婚礼市場のメインの存在になるのも時間の問題だが、それまでに、何とかウェディングの魅力を、このさとり世代にも感じてもらわなければ、ますます婚礼離れが勢いを増してしまうのではないか。

 

今は親族のみの食事会や少人数の披露宴が流行しているが、できるだけ多くの友人たちを招きたいと新郎新婦が思うように、また、列席した若者たちが、ウェディングってこんなにいいから、こんな大事な意味があるから、やっぱりお金を貯めてでも行いたいと思ってくれるように、業界も考え、提案していくべきだと思う。

 

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