ホスピタリティーは今どこに

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最近よく、ホスピタリティーってどこにあるのだろうと考えることが多くなった。「昔はね・・・」というようになったら、年寄りだし、現役なら引退したほうがいいと思う。しかし、どんなことにも本質は存在し、仏教では、諸行無常という「すべてのことは常に変化し、不変なものはない」という言葉もあるが、本質だけは別で、そのほとんどが大きく変化することのない不変なものだと思う。私が求め続けてきたホスピタリティーは、もう存在しないのかと思うほどお目にかかることが少なく、何処へ行ってもストレスを感じるようになった。

ホテルマンを長年続けてきたが、私の専門分野は、宴会、すなわち法人なら一般宴会、個人なら婚礼がおおよその認識だろう。婚礼に携わってからもう30年もたつが、そのトレンド変化は非常に速い。しかし、婚礼は時代とともに変化し、経済が低迷すれば、婚礼そのものも低迷する。婚礼がビジネスとして低迷するとき、ホスピタリティーも同時に低迷する現実に愕然とするし、その現実にやりきれないこともある。

私は、健康上の問題で、新郎新婦のお世話をすることは殆どなくなったが、私の運営するIWPA国際ウエディングプランナー協会は、常に最新の現場事情を把握するために、決して現場から離れない。実際に、月に何件かのプロデュースを協会として行っている。

1997年のゲストハウスの出現から、ホスピタリティーがその分野では低レベルのものが目立ってきた。私は、2001年にはホテルを退職し、サービス関連企業の代表の立場で、また、コンサルタントとしてホテルに寄り添い仕事を続けてきた。

そのような現状の中で、古き良き時代のホテルの妄想を抱きながら、その妄想の中で仕事をしてきたような気さえする。先日も自分自身で感じたことだが、自分はもうすでに時代錯誤の中でビジネスをしているのではないかと思ってしまった。

実際に、新郎新婦に寄り添い、ともにソリューションしたり、アドバイスをしたりしながらプロデュースを行っているプランナーの目から見ると、一人単価100,000円もかかる外資系ホテルでも、国内有名老舗看板を掲げるホテルでも、残念なことに、本来顧客を満足させなければならないホスピタリティーがどこへ行ってしまったのかと途方に暮れることすらある。

プランナーは、顧客の満足よりも自分の保身を優先したり、ホテルの看板でお客様が予約されていることも忘れたかのように、テナント業者に気を使ってか、お客様よりテナントを優先するような言動が見えたり、一体どうなっているのかと怒りに身体が震えるほどの憤りを感じてしまうことが多くなった。そのたびに、私も年なのかな?と何度も何度も振り返って、事実を検証してみるが、いつも思うことは、恐らくホスピタリティーというものの存在がなくなってきた事実が否めないということだ。

あまりにも、そうしたことに興味を抱かない人たちが増えたのか、それが経営者なのか従業員なのかは分からないが、明らかにホスピタリティーというものに対する興味は失われている。

ホスピタリティーなくして、そのホテルのグレードをどう評価するのだろう。

いつの時代もどんな経済状況下でもホテルは形態こそ変化するが、どんどん開業する。一流や超一流と言われるホテルのオープンが目立つが、雑誌やwebの評判で実際に行ってみても、私にはどこが一流なのか理解できないことが多い。建物、つまりハードにお金をかけ、アクセスのよい場所にオープンしたホテルは、間違いなく高評価を受けている。もしかすると、一般顧客もアクセスやハードだけで評価をしているのだとすれば、ホテル経営も容易でいいかもしれない。

もう、10年近く前になろうか。横浜の納税額で2年連続トップだった方の奥様のビジネスでお話を伺った時のことだが、その奥様に「谷藤さんは、ホテルの人材教育もお仕事の一つと聞いていますが、今の超一流ホテルと言われる外資系の○○ホテルで、先日宿泊してきたけど、マニュアル通りに応対しているのは分かるけど、あれじゃ一流とは言えないわね。海外の一流というホテルと比べると3流以下よ。谷藤さん、日本のホテルを何とかしなきゃダメよ。」と言われたのを覚えている。

昔から、10年ひと昔というが、この話は、10年前の話だが、10年後の現在は、さらにひどくなっている。私がホテルマンだったころ、ホスピタリティーでは、世界的にも10番以内にランクインしていたホテルの話である。今からおよそ8年ほど前だが、大切なお客様を連れて商談した際、タバコを吸いたいというお客様なので、タバコの吸える外庭のテーブル席で商談した。その際、スモーキングスペースなのにテーブルに灰皿がなく、お願いしても全く持ってこない。仕方がないので、私がステーションまで行って勝手に取ってきた。次に、いくら忙しいとは言え、オーダーを取りに来ないのでホールに立って周りを見渡している、いかにも仕事していますというウエイターのところまでワザワザ呼びに行って、テーブルまでオーダーを取りに来てもらった。お客様2人は、カクテルを注文したが、私はお酒が得意ではなかったので、ペリエを注文した。オーダー時にライムがあることを確認して、ライム付き(普通のオーダー)を注文したのに、持ってきたときには、ライムがついていなかった。普通ホテルでは、何も言わなくてもペリエを注文すればライムはついてくることが多い。ライム付きで注文した旨を伝えたところ、持ってきたのがレモンだった。この一連のウエイターは、同一人物である。私は、あきれ果ててそれ以上何も言わなかったが、お客様が、「このホテルって、超一流のサービスで有名なホテルですよね?」と聞いてきたが、「そのはずです。だから、お連れしたのですが・・・」と答えた。

私が、ホテルを辞めてから、15年以上経つが、最後のホテルは、私がその命を捧げてもいいと思ったくらい大好きだった。そのホテルを辞めようと決意した理由の一つに、人材教育の問題があった。当時、私は、宴会部長をしていたが、総支配人からこれからの人材育成の方針をスペシャリストからジェネラリストにしろという指示を受けたのだ。総支配人は、ジェネラリストを「なんでもできる人」と表現したが、人間には個人差があり、決してその能力は青天井ではない。結局、「なんでもできる人」を育てようとすると「何にもできない人」しか育たないのだ。この「スペシャリストからジェネラリスト」への方向転換は、当時の社会の共通認識のような部分もあったが、現状の人材不足を予想してのことだったかもしれない。しかし、その方向性が、ホスピタリティーの最高峰と言われたホテルを異質のものに変えてしまったような気がする。

私は、ウエディングの現状を見るにつけ、もちろん全てではないが、本来のプランナー業務を遂行しているプランナーは本当に少ない。現状行われている業務は、プランナー業務ではなくコーディネーター業務である。いつからプランナーがコーディネーターになったのか、そのルーツは、恐らく経営者や管理者の問題にあると思っている。現場の管理ができていないのだ。言い換えれば、現場におけるスペシャリストがいないのだ。間違えてはいけない。「臨機応変」と「いい加減」は全く違う。人材が枯渇し、業務を円滑に行えない状況で、現状のコーディネーターの仕事なら、会場によってはペッパー君のほうがお客様にストレスを与えずに済む。少なくとも、聞かれたことには正確に答えるからだ。全国平均350万円の高額商品をホテルでプロデュースする商品だからこそホスピタリティーが必要で、ホスピタリティーを伴う人材育成ができない企業は、お客様のためにもエセプランナーのためにもいち早くペッパー君の導入を考えたほうが良いだろう。こういわざるを得ないほど人材及びその人材が生み出すホスピタリティーに関する問題は、現状大きな問題なのだ。

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