不信感つのる!婚礼費用はなぜ高くなるか?

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私は、ブライダル業界の30年間、現場で半分、サポートで半分を過ごしてきた。過ぎてしまうと30年間は、長いようで短くも思える。この業界の現場を視点に新郎新婦のことを考えると、随分変わったようにも思える。今年に入って少なくはなったが、婚礼費用に関する苦情は相変わらず多い。

しかし、実際に私どもに寄せられる苦情の数からいえば、費用に関する苦情は明らかに減少傾向にあるといってよい。これは、恐らくブライダル市場が変わったのではなく、消費者である新郎新婦、特に新婦の考え方や行動が変化していると思う。それに合わせて、会場の管理やブライダルの周辺業者の商習慣やビジネス感覚の変化によるものだと思う。

現代のブライダルは、長期にわたるデフレ経済がブライダル市場の低迷に大きな影響を与え、隆盛時代のブライダルとは大きくかけ離れたものになった。

例えば、少子化、給与所得の低水準など様々な理由から結婚式を挙げるカップルが激減し、その結果、企業存続のために、件数確保が難しいので高単価維持を狙った企業の思惑と市場の乖離が進んだ。その証としては、ブライダル市場は低迷しているのにも関わらず、この10年間婚礼1件当たりの単価は、着実に上がってきた。厳密にいえば、2次会や1.5次回市場に移行しているという現状もあるからだ。

そんな中でも、新婦の結婚式に対する思いや虚栄心を満足させるための行動には余念がない。

少し前までは、レンタルドレスという表現をしており、日本では、今もなおレンタルドレスが8割以上を占める中、ドレスにおいては、セカンドオーナーやサードオーナーという表現がよく使われるようになった。言ってみれば、中古ドレスのことである。特に、高級ブランドのドレスでさえも、ご存知の「メルカリ」というCtoCビジネスサイトで取引が行われるようになった。「中古」という言葉を「セカンドオーナー」「サードオーナー」と言い換えて表現するのは、やはり虚栄心の強さの表れだ。「インスタ映え」する品々をいかにインスタに投稿し、自己主張をするか、満足も自分の満足はどうでもよく、他人に褒められる満足が重要なのだ。

だから、ホスピタリティーのないホスピタリティー産業が成り立ってしまうのだ。

一方、1件のウエディングを行うには多くの品物が必要となる。前述した衣裳もそうだし、引出物もその一つだ。従来の考え方では、会場と取引している業者は、個人に対して割引販売をすることなど、タブーの世界だ。しかし、現代では、会場と取引していても、平気でwebで割引販売をしている。そこには、商慣習も商人としてのモラルも存在せず、背に腹は代えられない理論だけが存在する。

このような状況下で、会場は、どんどん婚礼の利益を失い、それを阻止するために持込商品の制限をしたり、初期見積を現実と乖離したりした内容で提示し、新郎新婦という素人を半ば騙してまでも「即決」というものに持ち込むのである。

これが、一部上場企業のやることかと思うと愕然としてしまう。

私は、何度もそうした見積をお客様から見せてもらっているが、商売としてありえない見積も少なくない。実際に見積を作った人に話を聞いたことはないが、その人たちは、それを分かって作っているのか、上司の指示で作っているのかは分からないが、厳密にいえば法に触れるようなものもある。

例えば、引出物の個数が見積人数の半数しか計上されていない。

80名の披露宴で、引出物の計上個数が40個である。見積作成者のコメントをお客様から伺ったが、親戚が比較的多いので、夫婦でご出席の方が多いからこの個数で大丈夫と言われたそうだ。この感覚で、招待状も人数の6割の作成枚数などで見積計上。衣裳に至っては、存在しないドレスの格安価格で計上されていたということだ。打合せの時に、この金額のドレスを見たいと言ったら、ここにはありませんと衣裳室のスタッフに言われたそうだ。また、見積を最も大きく左右する料理単価も今まで注文されたこともないであろう最低単価で計上。演出関係も殆ど計上されていない。

これでは、実際の支払金額が、初期見積の2倍の金額になってしまう種明かしとしては説得力のある現状である。

実は、ある特定の企業だが、最終見積が初期見積の2倍になったという話はよく聞く。実際に私の友人でもあるブライダル関連業界の社長の娘の結婚式も全くそうであった。

こうしたことが、この10数年間行われ続け、消費者も少しは学習したと思いきや、ここがウエディングの盲点となるが、前述した虚栄心が支配する新婦からこのようなことが広がることは少ない。

大事なことは、高額商品なので、消費者がもっと学習をしなければならないということだ。「上場企業だから安心」などという考え方は過去の産物である。

プロとまではいわなくとも、初期見積の時点で、必要なもの、不要なものの判別がつき、自分が希望する商品の想定金額で計上するよう指示して見積書の作成をしてもらえば、お互い納得ができてよい関係維持ができるし、お客様も不信感を持たず打合せもスムースに行くはずである。

本来、結婚式の準備作業は大変ではあるが、楽しくワクワクするものでなくてはならないはずだ。しかし、現状の新郎新婦様を見ていると、打合せを重ねるたびに不安が増長し、楽しさよりも悲壮感が優先してしまう新郎新婦も少なくない。こういう新郎新婦がよくIWPAに相談に来る。

私は、決め事というのは非常に重要なものであり、規制があってこその自由の満足感があると思うし、お客様の要望が、必ずしも儀式としてふさわしくないものもあり、そんな時は、ウエディングプランナーがしっかりと説明してご納得いただくだけの説明能力や信頼関係を持つことが望ましいが、今やお客様の要望が儀式にふさわしいかどうか判断できる知識や経験を備えたプロのウエディングプランナーは非常に少ない。ただただコンプレインが起きないための保身に走るほうが楽だからだ。

ブライダルには、旅行には旅行業法のようにブライダル法という法律がないため、一見無法地帯のようにも思えるが、実は、「消費者契約法」という消費者を守るための法律がある。この法律によると、販売者は、販売前にその商品の長所と短所の両方を説明した上で販売を行わなければならないことを定義している。ブライダルの場合は、初期見積の際に、想定できる経費の説明を行うのがまっとうな販売者の常識であり、実際の婚礼と大きく乖離した見積で、「これで挙式・披露宴ができます」というのは、本来法律違反ということになるのです。

こうした認識でお客様と接すれば、お客様に不信感を与えることはないと思う。

 

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