連載原稿73 プロの技が光る「本物の商品」

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日本の経済は、戦後のどん底から這い上がって、高度成長期を経てバブル時代を迎え、そのバブルは崩壊して長期的なデフレ時代を招いた。我々は、この激動の中を生き抜いてきたわけだが、殆どの日本人は、これまであまり疑問も持たないまま、その時々の現実をただ受け入れてきたと思う。

 

しかし、今の時代において、ビジネスで新しいことを始めるときに、その判断基準を「他がやっているかどうか」というところに求めるのは、この時代を生きる企業としてどうだろうか。

 

技術の進歩や情報伝達速度の劇的な加速化により、現代はものごとの動きが過去とは比べようもないほど速くなっており、WEBのSEO対策のように何をしても後手に回る迷走状態だったり、大企業でもかじ取りひとつで倒産の危機となる時代だったりする。勿論、それぞれの企業は、独自のマーケティングで様々な販売促進を行っていると思うが、的を射た対策を講じている企業がどれだけ存在しているのだろうか。

 

ブライダル業界においては、団塊ジュニア世代が結婚適齢期から外れた今、ポスト団塊ジュニア世代、ゆとり世代、さとり世代という3世代に渡る顧客層が存在するが、それぞれが固有の世代特性を持ち、それに合わせたセールスを行わなければ、効果的な販売はできない。

 

イケイケの団塊ジュニア世代のインフレ時代には、金額の高さで価値が決まり、知名度だけで、その良し悪しが決まってしまうことが多く、バブルが崩壊してデフレ時代に入っても、いまだにこの感覚を持ち続けている人たちは多い。

 

だが、前記事でも申し上げたが、今日の日本では、かつてない高齢化によって、歴史的なパラダイムシフトが起きており、以前の日本とは全く違った常識が支配しようとしている。

 

このことを認識すれば、現代に起こっている様々なことが理解できるし、現状の打開策は、新しい物の考え方をしなければ生まれてこないことも理解出来よう。

 

消費者は、長いデフレ時代を経験してきたと同時に、WEBの発展により情報量が劇的に増えたことで利口になっている。加えて、劇的な、歴史的にもかつてない少子高齢化の波によって、社会の構造や常識は大きく塗り替えられていることにいち早く気づき、新しい考え方で対処していかなければ、全てがうまく行かない時代なのである。

 

本来、市場では、プロの技術に裏打ちされ、創意工夫された商品でなければ支持されないはずが、産業発展のプロセスにおいては、需要と供給のバランスが崩れ、一時的に需要過多になった結果、価格競争に陥り、業界によっては、素人でも出来るレベルのものが市場を席巻し、それが当たり前、むしろより良い商品とされることもある。しかし、それはあくまで一時的なもので、時間が経つと本質が見え、一転して満足度の低い商品へと転落してしまうことがある。

 

また、バブル時代は、人のフンドシで相撲が取れたが、今はそんなことはできない時代になっている。最近の広告を見ても欺瞞が多いが、その業界の有名人が何かをいうと、「そういう人が言っているのだから、そうであるに違いない」と思うのは、過去の時代の人たちであり、現代の若者たちは決してそうは思わないのである。

 

彼らは、いくらその業界の著名人が看板になり客寄せパンダになっても、そんなに単純にその商品が良いとは思わない。自分たちが実際にある程度体験して、本当に良いと判断するまでは、誰も信用しないのだ。

 

これからの時代は、プロの技をベースにした「本物の商品」でなければ、あっというまに消費者に叩かれ、そっぽを向かれてしまうであろう。「他がやっていないからしない」、「他もやっているからやろう」といった従来の単純な考え方では通用しないのである。

 

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